shaula

愛すべき赤の他人

ルダスの悪い癖

 

ライターの音は憚らずに鳴る
きみが目を覚ましてしまうかもしれない
昏い部屋で何も知らずに眠る
きみとお別れをしなくちゃいけない

 

夢は見るものじゃなく  消えて忘れゆくもの
安らかな恋を叶えられたら

 

じきに朝がくる

 

煙草のけむりが目に滲みて痛いな
涙なんか溢れるはずない   からっぽなのに
ただこの思いの行き場がないだけ
ため息が灰に濁っちゃった


遠い記憶がはち切れるような音を立てて
けむりになって  ゆらめいて  のぼってく


まぶしい火をこっそり閉じて
そうっと導くように息吹をくゆらせて
ぼんやり、明後日を眺めてたんだ
ルダスの悪い癖だよなあ
言いそびれた本音がこんなにある、のに

 

 

夢は見るものじゃなく消えて忘れゆくもの
あたたかな恋をともせたのなら

 

じきに朝がくる

 

煙草のかおりが胸に沁みて困るな
名残なんか惜しいはずない   からっぽなのに
ただあの記憶を呼び起こしただけ
しがらみが肺に残っちゃった


思い出はもう抱えきれないって声をあげて
すこしこまって  ほほえんで  きえてゆく

 


昏い部屋のドアを静かに閉める
きみは目を覚ましているのかもしれない
ライターの音は憚らずに鳴る
きみとお別れをしなくちゃいけない

 

 

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歌詞を書く機会があった。

以前書いた140字小説をベースにしている。

元ツイートは消してしまったけれど、覚えているからここに書き残しておく。

 

 昏い部屋できみは眠っている。ぼくは煙草を1本取り出した。ライターの音は憚らず鳴る。きみが目を覚ましてしまうかもしれない。まぶしい火をこっそり閉じて、そっと導くような息をした。じきに朝がくる。ぱち、ぱちぱち、遠い記憶がはち切れるような音をたてて、煙になって、ゆらめいてのぼっていく。

 

 

こうしてある程度の長さにしてみると、140字では掬いきれなかった言葉があるような気がする。解説したいのはやまやまだけど、ここはぐっとこらえて。まだひみつ。140字小説も書きつつ、こうして忘れものがないか詩に起こしつつ、またのろのろと歩き出したいと思う。よろしくお願いしますね。